著者について 三島律。製薬会社で医薬品の研究開発(育毛剤・発毛剤を含む)に長年携わった元製薬会社員です。医師ではありませんが、添付文書・審査報告書を一次情報として読み続けてきた経験から、AGA治療に関する正確な情報をお届けします。
AGA治療を始めようとして、副作用が気になって踏み出せない。
その気持ちはよく分かります。フィナステリドの副作用として「勃起不全」「性欲減退」と書いてあるのを見て、怖くなった方は多いはずです。
ただ、私が32年間添付文書を読んできた経験から言わせてほしいことがあります。
「書いてある=必ず起こる、ではない」
副作用の正しい読み方を知らないまま判断してしまうことが、AGA治療を諦める最大の理由の一つになっています。今回は、製薬会社で医薬品開発に携わってきた立場から、正直にお伝えします。
目次
副作用の「頻度」を正しく読む
添付文書を見ると、副作用の欄にはパーセンテージが書かれています。ここを正しく読めるかどうかが、副作用への正しい理解の分かれ目です。
医薬品の添付文書では、副作用の頻度をおおよそ次のように分類します。
- 頻度不明:発症数がデータ化できていない
- まれ(0.1%未満):1,000人に1人未満
- ときに(0.1〜5%未満):100人に1〜5人未満
- しばしば(5%以上):20人に1人以上
この前提を知った上で、AGA治療の主要な薬について見ていきます。
フィナステリドの副作用:添付文書の数字を正確に読む
フィナステリドの添付文書(国内承認品)に記載されている主な副作用です。
性機能系への影響
最も気にされる副作用がこれです。数字を、添付文書からそのまま引きます。
国内で行われた試験です。24歳から50歳の方414人が参加し、48週間続けられました。参加者を3つのグループに分け、片方には本物の薬を、もう片方には有効成分の入っていない偽の薬を飲んでもらう。どちらを飲んでいるかは、本人も医師も知らされません。そういう作り方の試験です。
| 0.2mgを飲んだ人 | 1mgを飲んだ人 | 偽薬を飲んだ人 | |
|---|---|---|---|
| 何らかの副作用が出た人 | 1.5%(137人中2人) | 6.5%(139人中9人) | 2.2%(138人中3人) |
| 性機能に関する副作用が出た人 | 1.5%(137人中2人) | 2.9%(139人中4人) | 2.2%(138人中3人) |
本物の薬を飲んだ276人のうち、性欲の減退が3人(1.1%)、勃起がうまくいかない症状が2人(0.7%)に見られました。
ここで、数字の読み方を先に正しておきます。
インターネットでよく見かける「6.5%」という数字は、性機能の副作用の頻度ではありません。血液検査の数値の変動なども含めた、あらゆる副作用を合わせた数字です。
性機能に関する副作用だけを見れば、1mgを飲んだ人で2.9%です。
偽薬を飲んだ人にも、2.2%出ている
この表で、私が最も見てほしいのは、いちばん右の列です。
有効成分の入っていない偽薬を飲んだ138人のうち、3人(2.2%)に性機能の副作用が報告されています。
本物の薬を飲んだ人は2.9%。差は0.7ポイントしかありません。
ノシーボ効果という現象があります。よく知られたプラセボ効果の、ちょうど逆です。「この薬は副作用が出るかもしれない」と先に知ってしまうと、薬の成分と関係なく症状が現れやすくなる。
偽薬を飲んだ人の2.2%という数字は、それを示しています。
誤解のないように書きます。フィナステリドの副作用がないという話ではありません。本物の薬を飲んだ人の方が、数字は高く出ています。
ただ、「飲んだら必ずEDになる」という理解は、実際の数字とはかけ離れています。そして、恐れそのものが症状を呼ぶことがある。この両方が、同じ表の中にあります。
肝臓への影響
添付文書には、肝臓の機能に障害が出ることがあると書かれています。頻度は分かっていません。
血液検査で確認できます。クリニックで処方を受けていれば、定期的に調べてもらえる。これが「医師の管理のもとで使う」ことの意味の一つです。
前立腺がん検診への影響
見落とされがちですが、知っておくと役に立つ話です。
健康診断や人間ドックで、PSAという血液検査を受けたことがあるかもしれません。前立腺がんを見つけるための検査です。
フィナステリドを飲んでいると、この数値が実際より低く出ます。添付文書には、約40%低下すると書かれています。
だから、この検査を受けるときは、フィナステリドを飲んでいることを必ず伝えてください。伝えれば、医師はそれを踏まえて数値を読んでくれます。添付文書にも、2倍した値を目安に評価するよう書かれています。
黙っていると、見つかるはずのものが見つからないことがある。それだけの話です。
デュタステリドの副作用:フィナステリドとの比較
デュタステリドも、フィナステリドと似たような副作用の出方をします。
| フィナステリド | デュタステリド | |
|---|---|---|
| 抑える酵素 | Ⅱ型だけ | Ⅰ型とⅡ型の両方 |
| 性機能の副作用 | 2.9%(偽薬は2.2%) | 添付文書に同じような記載 |
| どちらが多いか | ― | 研究によって結果が分かれる |
デュタステリドはDHT産生抑制が強い分、副作用リスクが高いと言われることがあります。ただし、臨床データでフィナステリドと比べて有意に副作用頻度が高いかどうかは、研究によって異なります。「強い薬=副作用も強い」という単純な比例関係ではないことは知っておいてください。
ミノキシジルの副作用:外用薬と内服薬で異なる
ミノキシジルの副作用は、外用薬と内服薬で大きく異なります。
外用薬(リアップ等)
外用薬は局所作用が中心であるため、副作用リスクは相対的に低めです。
- 接触性皮膚炎:かゆみ・発赤。アルコール成分に反応することが多い
- 体毛増加:顔・首・肩などに産毛が増えることがある
- 初期脱毛:使い始めに一時的に抜け毛が増える(後述)
内服薬(処方薬)
内服薬は全身に作用するため、外用薬より副作用の範囲が広くなります。
- 体毛増加:外用薬より顕著に現れることがある
- 循環器系への影響:動悸・むくみ・血圧変化。頻度は低いが、既往症がある方は特に注意が必要
- 初期脱毛:外用薬同様に起こりうる
内服薬は必ず医師の処方のもとで使用し、定期的なフォローアップが必要です。
「初期脱毛」は副作用ではなく薬が効いているサイン
副作用の話をするとき、必ず触れなければならないのが初期脱毛です。
ミノキシジル(外用・内服)を使い始めた1〜2ヶ月後に、一時的に抜け毛が増えることがあります。これを「副作用が出た。やめなければ」と判断してしまう方がいますが、これは誤りです。
初期脱毛の正体は、薬によって休止期にある毛(telogen毛)が押し出され、新しい成長期の毛が生えてくる過程で起きる現象です。治療が効いているからこそ起きることであり、やめるべき理由には当たりません。
多くの場合、3〜4ヶ月で落ち着きます。初期脱毛でやめてしまった方が一定数いることは、AGA治療における大きな損失だと感じています。
私が副作用についてどう考えているか
開発者として正直にお伝えします。
もし私自身がAGAと診断され、フィナステリドを選ぶとしたら、副作用をどう考えるか。
同じ試験で、48週後に「良くなった」と判定されたのは、薬を飲んだ人で58.3%。偽薬を飲んだ人は5.9%でした。
10人に6人が改善する薬と、20人に1人しか改善しない偽薬。効果の差は、はっきりしています。
一方、性機能の副作用の差は0.7ポイントです。
この2つを並べたとき、私は飲む側に立ちます。
量について、あまり知られていない話
添付文書には、こう書かれています。通常は0.2mgを1日1回。必要なら増やせるが、1日1mgまで、と。
そして、量を増やしても効果が強まることは確認されていない、とも書かれています。
先ほどの試験を見返してください。良くなった人の割合は、0.2mgで54.2%、1mgで58.3%。添付文書は、この差に統計上の意味はなかったと記しています。
一方、性機能の副作用は0.2mgで1.5%、1mgで2.9%。0.2mgの方は、偽薬の2.2%より低い数字です。
多くのクリニックで出されるのは1mgです。それが間違いだと言うつもりはありません。どの量を選ぶかは、医師が診察の上で決めることです。
ただ、添付文書にこう書かれているという事実は、知っておいていい。副作用が心配なら、量について相談する余地がある、ということです。
リスクを、正しい大きさで持つ
副作用の数字は、実際より大きく語られてきました。
「6.5%」が性機能の副作用として広まり、偽薬でも2.2%出ていることは、ほとんど語られない。
数字を正しく置き直すと、見え方が変わります。
副作用が出ないとは言いません。ただ、恐れの大きさと、実際の数字は、かなり違う。そして、副作用が出たときに気づいて対処できる場所が、クリニックです。
正しい大きさのリスクを持って、医師と相談しながら始める。それが、いちばん損の少ないやり方だと思います。
副作用が心配だからこそ、クリニックで処方を受ける意味がある
副作用への不安を「だから飲まない」という結論に持っていくのは、私から見ると逆の判断です。
副作用が心配だからこそ、医師に相談しながら治療を受けることに意味があります。
クリニックで処方を受けると、以下のことができます。
- 自分の健康状態・既往症を踏まえた薬の選択
- 定期的な血液検査による肝機能・その他のモニタリング
- 副作用が出た場合の迅速な対処・薬の変更
- 初期脱毛等への事前説明と不安の軽減
市販薬や個人輸入で自己管理するよりも、副作用リスクを適切に管理できる環境があるのがクリニック処方の本質的な価値です。
まとめ
- 48週後に良くなった人は58.3%。偽薬では5.9%。効果ははっきり出ている
- 性機能の副作用は2.9%。よく見る「6.5%」は、血液検査の変動なども含めた全副作用の数字
- 同じ試験で、偽薬を飲んだ人にも2.2%出ている。この差は0.7ポイント
- 添付文書の通常量は0.2mg。1mgは上限で、増やしても効果が強まることは確認されていない
- 肝臓への影響は血液検査で確認できる。クリニックなら定期的に調べてもらえる
- PSA値が約40%低下する。前立腺がん検診の際は必ず服用を申告する
- ミノキシジルの初期脱毛は副作用ではなく治療効果のサイン。途中でやめないことが最重要
- 副作用が心配だからこそ、医師管理のもとで治療を受ける選択が合理的
副作用への正しい理解が、AGA治療の最初の一歩を踏み出す力になると思っています。
気になる方は、まず無料カウンセリングで医師に直接相談してみてください。副作用も含めて、自分の状況に合った選択ができます。
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【免責事項】本記事の情報は医療アドバイスではありません。副作用・治療方針については必ず医師・薬剤師にご相談ください。師にご相談ください。